ファン研究グループ
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本研究グループの目的
このページはファン研究は文化現象を分析する学術領域を研究し、その内容を一般に向けて発信するためのものです。ファン研究は1990年代に英語圏で形成された研究領域ですが、日本ではファン 研究として名指されていはいないものの、戦後の SF 同人文化、宝塚やジャニーズなどの女性ファンの活動、さらに近年ではアニメや漫画文化など、ファン文化についての研究は多数存在しています。
本グループの活動目的は英語圏のファン研究における理論的課題や関連する事例研究の蓄積を日本語の文化理論研究やポ ピュラー文化研究の中に吸収し、日本の観点から応答することにあります。日本における事例研究や理論を英語圏の議論と比較することで、日本における例えば「オタク」や「推し」といったファン文化についての議論を国際的に開いていくことが理想です。そうすることで、日本国内にファン研究の基礎と研究者のネットワークを作り出 し、英語圏だけでなく東アジアや東南アジアにおけるファン文化現象やファン研究へアクセスする回路を作り出すことが目標です。
1 英語圏ファン研究の議論の吸収と日本からの応答
英語圏の研究動向を把握し日本における事例や理論的議論と照らし合わせて議論する ことで、日本で蓄積された知見を活かしてファン研究全体を理論的に発展させる。
2 現代の大衆消費社会における市民的公共性について知見の拡大
ネットが普及し娯楽コンテンツが氾濫したことで真面目なものと不真面目なものの境 目が曖昧になった大衆消費社会における市民的可能性を考える手がかりとなる。例え ば、家族の変容とアイドルや「推し」といった情動経済の関係、ポピュリスト政治家の 戦略とファンダムのメカニズムとの関係、マイノリティー差別と SNS 上でのエコー・ チャンバーの形成との関係といったテーマは、伝統的に真面目で公共的とされる領域( 家族、政治、差別)と娯楽が融合したものであり、ファン研究はこういった現象の理解 を深めるアプローチである。
3 ファン研究の裾野の拡大
オンラインで情報公開することで、日本のファン研究者、学生、一般の人々が英語圏 のファン研究を知る手がかりとなる。研究者コミュニティーの長期的な活性化に寄与 するだけでなく、例えば英語圏では K-Pop と日本のアイドルのファンの振る舞いを比 較した議論は多数あるので、こういった議論への日本語でのアクセスを開くことは日本の文化と産業にも長期的に寄与する。
本研究グループの活動内容
本プロジェクトはサントリー文化財団の研究助成「学問の未来を拓く」(2022年8月-2023年7月)の支援を受けて行われました。本研究プロジェクトでは、まずTransformative Works and Culturesというファン研究に関する英語圏の査読付き学術雑誌に掲載された論文の題目・要旨を日本語に翻訳した目録を作成しました。(翻訳にあたっては、杉山怜美さん、當眞日奈子さん、谷口璃夏さんにご協力いただきました。)これを元に研究動向を把握しながら、月に一度、話題提供者を指名して議論を深めました。研究グループのメンバーの発表内容の要旨は「話題提供要旨」に少しずつ公開していきます。
本研究グループのメンバー
2022年8月から2023年7月にかけて以下のメンバーで定期的研究会を開催しました。今後もゆるやかにファン研究のネットワークを維持していく予定です。
代表者 渡部宏樹 | 筑波大学・助教 | 映画メディア研究、表象文化研究、ファン研究 |
阿部康人 | 同志社大学・准教授 | コミュニケーション学 |
大尾侑子 | 東京経済大学・准教授 | メディア史 |
北村紗衣 | 武蔵大学・教授 | シェイクスピア、フェミニスト批評、ファン研究、ウィキペディア |
倉橋耕平 | 創価大学・准教授 | 社会学、メディア文化研究、ジェンダー研究 |
杉山怜美 | 慶應義塾大学・博士課程 | 文化社会学、メディア研究、ファン研究 |
陳怡禎 | 日本大学・助教 | カルチュラル・スタディーズ、サブカルチャー研究、台湾研究 |
平井智尚 | 日本大学・准教授 | メディア研究、インターネット文化研究、ファン研究 |
森類臣 | 摂南大学・准教授 | 社会学、朝鮮半島地域研究 |